【第3回】「優柔不断な人」は本当に軸がないのか?リスクが見えすぎる「俯瞰型」が判断を下す作戦

はじめに

「なかなか決断を下せない」「自分にはブレない軸がないから優柔不断なんだ…」と自分を責めてしまうことはありませんか?

決断が遅い人は、周囲から「自分の意見がない」「軸がぶれている」と思われがちです。しかし、実際にはその正反対であるケースが少なくありません。決められない理由を深堀すると、決して意思や能力が欠けているからではなく、「視野が広すぎて、あらゆるリスクや選択肢が同時に見えすぎている」可能性もあるということに気づきましたので、ご紹介します(別の可能性としては、これと被るところもありますが「正しくリスク評価をする軸を持たない」「何がリスクなのかがぼやけており何となく不安、という状況になっている」でしょう。これらのタイプにも、今回の記事は示唆があるでしょう)。

今回は、この「俯瞰型」特有の思考メカニズムを紐解き、リスクの波に飲み込まれずに納得感のある判断を下すための具体的作戦をお伝えします。

1. 「優柔不断」の正体は「高解像度のリスク知覚」

何かひとつを選ぼうとした瞬間、俯瞰型の頭の中では以下のような多角的なシミュレーションが同時に動き出します。

  • A案を選んだ場合のメリットと、同時に発生するコストや懸念点
  • B案を選んだ場合のメリットと、関係者への影響や失敗パターン
  • 「今決断しなかった場合」に生じるリスクと機会損失

この思考をする人は、複数の要素が見えすぎるがゆえに、どの道を進んでも何らかのデメリットや障害が目につき、決断ができなくなってしまいます。つまり、優柔不断の正体は意思の弱さではなく、「リスクに対する解像度の高さ(と判断軸やリスク明確化の不足)」の可能性があります。つまり、「いいところ」(比較しないといけない要素を並べること)へはたどり着けているので、あともう一歩です。
ここでは、「いったい何が原因で優柔不断になるのか、両者のメリット/デメリット、懸念点を明確にしよう」と捉え直し、紙に書いたり、誰かと話したり、その行動の目的を思い起こすことから始めてみるとよいでしょう。

2. 俯瞰型がリスクの波を抜けて判断を下す3つの作戦

視野が広すぎる人/簡単に決められない人が決断を下すには、完璧な正解を探すのではなく、意図的に情報を削ぎ落とし、思考のフレームを絞り込むアプローチが有効と考えられます。

  • 作戦1:リスクを「排除」するのではなく「許容上限」を決める
    • ノーリスクな選択肢を探そうとすると永遠に決められません。「どのリスクなら発生しても自分が責任を負えるか」(もしくは、失敗してもリスクが小さいか、目標を達成する成功確率が高いか)というフェイル・セーフ/成功確率の視点に切り替えます。
  • 作戦2:判断基準を「未来の予測」から「現在の可用リソース」に絞る
    • 長期的な影響や未来の展開を深追いすると、検討すべき変数が無限に増えてしまいます。「今ある時間・予算・自分の体力で、即座に動かせる手札はどれか」という現実的なリソースのみを基準にします。
  • 作戦3:「人生を左右する大決断」ではなく「期間限定の仮説検証」と捉える
    • 「一度決めたら撤回できない」と考えると動けなくなります。「まずは2週間だけA案を試す」といった実験として扱い、軌道修正や撤退の条件をあらかじめ決めた上で一歩を踏み出します。
  • 作戦4:客観視ができるような場を整える
    • あれこれ頭の中で考えていて、収拾がつかなくなっていることが優柔不断の原因の一つです。あれこれ考えて結局元居た場所に戻ってきてしまった感覚がある場合は、自分の考えを整理して客観視できる場を作ることが有効です。代表的な作戦としては以下のようなものがあります。
      • メリット/デメリット、懸念点、自分が分かっていないことなどを紙に書く。これが分かれば判断できる、というところまでできるとベスト。
      • 人に聞いてもらう。
      • なぜその活動をしようとしているのか、目的を考える。取れる手段の前提を考えて、そもそもその行動がとり得る選択肢なのかを考える
  • 作戦5:いったん考えないことにする
    • 実はこれも有効な作戦です。ぐるぐる思考が固定化されているために優柔不断になっていることがあるためです。趣味など没頭できる環境を作り出すことで脳がリフレッシュし、再び課題に向き合った時に違う切り口での視点が見えてくることがあります。もしくは、別のことをやっている時にふと合理的な選択肢が浮かぶことがあります。他の作戦とも共通しているのが、「一旦自分の囚われを解くこと」です。
  • 作戦6:とりあえずどれかやってみる
    • 極端な話ですが、実はこれも正解だったりします。なぜならば、あなたがそれだけ迷うのであれば、どれを選んでも明確に間違いだというものではないという捉え方ができるからです。どちらに進んでも大失敗にはならないと信じてスモールスタートし、ある程度進んだ先で考えてみると、その進んだ先に何がありそうか、障害として何がありそうかはより解像度高く見えてくるものです。そうすれば、成功への近づき方も自ずと見えてくるでしょう。
      また、たとえそれが失敗だったとしても、なぜそれが失敗になったのかの理解度は進まなかったあなたよりも遥かに上であり、確実にその失敗は次のあなたの挑戦を有効に支援してくれるでしょう。
      どちらの決断をしても決定的な間違いではない、失敗してもそれが自分の糧になるし、道中の失敗を修正できれば成功に近づけるかもしれない、と自分を信じてみるのも一つの手です。

おわりに

「リスクが見えすぎる視野の広さ」は、意思決定の段階ではブレーキとして働きます。しかし、「一度方向性を決めた後の実行フェーズ」においては、強力なリスクヘッジ能力という最大の武器に変わり、納得をもって緻密な作戦を進める手掛かりになります。あらかじめ課題や懸念点を把握できているため、問題が発生しても焦らず、想定したリスクだと納得しながら冷静に対処できるでしょう。

そもそもそこまで考えられるあなたであれば、道中の失敗もなぜ起こったか理解できるし、対処法を思いついたり、失敗を糧にしたりすることもできるでしょう。人生が終わってしまう失敗は別かもしれませんが、失敗をした後も人生は続きます。その後の人生で、その失敗を生かせばよいのです。それは、恐らく失敗をしていない人、挑戦をしなかった人よりも本質的な意味での成功に近く、以前の自分よりも一歩進んだ自分になっているでしょう。

「決められない自分」を責める必要はありません。広がりすぎる視界をフィルターで適度に絞り込み、もしくは自分の考えを明確化して整理することで、方向性を定めて決断することができるようになります。完璧でなくても、小さくてもよいので、まずは一歩を踏み出してみることも一つの解決法です。踏み出せば視点が変わり、さらに解像度高くリスクとその先に期待する成功があるかどうかも見えてくるはずです。

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東京工業大学修了後、製薬企業で他部署や受委託先と課題解決に取り組む品質保証業務にたずさわる。 労働組合の副支部長も経験し、立場の違う組合員や他社含む会社側の視点に触れることで、活動に対する適切な目的設定や達成手段の理解と、またそれに至る考え方を深めている。 自他の数々の悩みに向き合ううちに、課題への向き合い方と自分の人生を楽しく生きる考え方を他の人にも広く役立てられないか模索中。
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