心理的安全性×生産性④:なぜ「長時間残業」はチームをダメにするのか?ストレスと余裕の欠如が「心理的安全性」と「対話」を破壊するメカニズム
「チームの心理的安全性を高めたい」「もっとメンバー同士で建設的な議論(タスク・コンフリクト)をしてほしい」——そう願いながら、組織改善に取り組んでいるマネジャーやリーダーは多いと思います(前回記事はこちら)。
しかし、もしあなたのチームが「恒常的な長時間労働」に晒されているとしたら、どんな施策やノウハウを導入しても失敗する可能性が高いのではないかと2冊の本を深めた考察として考えたので紹介します。
なぜなら、長時間労働による「過度なストレス」と「時間的・精神的な余裕の欠如」こそが、心理的安全性とタスク・コンフリクトの両方を直接的に破壊してしまうと考えられるからです。
今回は全5回シリーズの第4回として、長時間残業がチームの対話を殺してしまう悪循環のメカニズムと、心理的安全性・タスク・コンフリクトを取り戻すための「働き方の土台づくり」について解説します。
長時間労働が引き起こす「ダブルの破壊」
長時間残業が常態化すると、過度な疲労とストレスによって、チームコミュニケーションに以下の2つの致命的な問題が生じることが多いと考えられます。
【長時間残業が引き起こす負のスパイラル】
恒常的な長時間残業・過重労働
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├──> 【ストレス増大】 ──> 余裕を失い感情的になる ──> 心理的安全性の低下
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└──> 【時間的余裕の欠如】──> 改善・議論を諦める ─────> タスク・コンフリクトの低下
│
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思考停止・事なかれ主義・組織の停滞
1. ストレスによる「心理的安全性」の低下
人は過度な残業や疲労でストレスが溜まると、どうしても感情のコントロールが難しくなり、他人に対して寛容になれません。これには、その人が担う仕事の質と量の両方の面が影響すると考えられます。
言い方がキツくなったり、相手のちょっとしたミスにトゲのある反応をしてしまったり、攻撃的な態度をとりがちになります。こうした「不機嫌さ」や「ピリついた空気」が日常化することで、周囲は「責められるかもしれない」と恐れを抱き、もしくは建設的な議論にならないと感じ、チームの心理的安全性は次第に低下していくでしょう。
2. 時間的余裕の欠如による「タスク・コンフリクト」の低下
建設的な議論や業務の改善(タスク・コンフリクト)を行うには、「立ち止まって考える時間」と「議論に付き合う精神的余裕」が必要です。
しかし、目の前の業務に追われ残業続きの状態では、「議論をしている時間すら惜しい」「余計な提案をして自分の仕事(言い出しっぺの負担)が増えたら困る」という心理が働きます。結果として、違和感や疑問があっても「とりあえず今のやり方でいいや」と流すようになり、事なかれ主義と思考停止、改善の先延ばしが蔓延します。
「土台(労働時間の削減)」がなければ対話は生まれない
つまり、「心理的安全性やタスク・コンフリクトを高めたいなら、まず残業を減らしてチームに余白(余裕)を作らなければならない」ということになってくるでしょう(鶏が先か卵が先かという話にも聞こえますが、そもそも残業をしないと回らない組織自体が機能不全で、マネジメントによる管理レベルが低いと言えるでしょう。そもそも残業を減らすと基本的に生産性は向上するので、まずは残業を減らすと結果的に時間内でも業務が終わることにも気づくことさえあります)。
どれほど素晴らしい対話フレームワークやコミュニケーションスキルを学んだところで、溺れかけて呼吸すらままならない人間(疲弊したメンバー)に「もっと質の高い議論をしよう」と求めても不可能です。
チームに健全な対話を取り戻すためのファーストステップは、根性論で話し合いを強制することではなく、物理的に残業を減らし、メンバーの精神的・時間的な「余白」を確保することが必要となってくるでしょう。
対話を復活させるための3つの処方箋
では、長時間残業の悪循環を断ち切り、心理的安全性とタスク・コンフリクトを増やしていくにはどうすればよいでしょうか。
1. 業務削減を「最優先のタスク」と位置づける
「余裕ができたら改善しよう」では永久に残業は減りません。マネジャー主導で、「成果を生んでいない業務」や「慣習化しているレポート」などを強制的に削り、まず物理的な作業時間を削り出します。
2. マネジャー自身が「余裕」を見せる
リーダーがイライラしながら長時間残業をしていると、チームの心理的安全性は即座に崩壊します。マネジャーこそが適切な稼働管理を行い、落ち着いた状態でメンバーと向き合う姿勢を示すことが、チームの安心感(心理的安全性)に直結します。
また、マネジャーは業務面での負荷以外にも各部下が抱えるプライベートの負荷も気にして、各部下が適切な負荷(実感だと負荷が掛かりすぎなことが多いため余裕を感じる程度)となるよう、部下の状況の観察を不断に続ける必要があります。
3. 「改善のための時間(余白)」をあらかじめブロックする
スケジュールの中に、あらかじめ「業務プロセスを見直すための1時間」などを強制的に組み込みます。時間的余裕を仕組みとして担保することで、メンバーが安全に疑問を持ち寄り、建設的な議論(タスク・コンフリクト)ができる場を確保します。
まとめ
心理的安全性とタスク・コンフリクトを機能させる前提には、メンバーの心身の健康と精神的なゆとり(サステナビリティ)が不可欠です。
長時間残業によってストレスが溜まり、余裕がなくなれば、組織は必然的に「ピリピリして発言できない(心理的安全性ゼロ)」や「誰も改善しようとしない(タスク・コンフリクトゼロ)」の不毛な状態に陥ります。
「良い議論や良い関係性」を作るためにも、まずは「残業を減らし、チームにゆとりを取り戻すこと」から始めてみてはいかがでしょうか。
次回はいよいよ最終回(第5回)。「総括・まとめ編:明日から始める、心理的安全性とタスク・コンフリクトを両立させる第一歩」をお届けします。
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